救出まで
暗い闇の中、隣のマンションの非常ベル、救急車のサイレンだけが聞こえる中、ただただ呆然と助けが来るのを待っていました。時々、思い出したようにタンスを持ち上げたりしながら・・・。
私は、しょうくんが、ずっと泣かないし、何も言わないので、『もしかしたら、もうしょうくんは死んでしまったのかな?人間って、こんなに簡単に死んでしまうの?』と言う気持ちと、『まだわからないよ、生きているかもしれない』と言う気持ちが、乱れ飛んでいました。
少なくとも、私は泣いていませんでした。心のどこかで死んでしまっているとわかっていたのに、涙は出てきませんでした。どうしてだか、自分でもわかりません。
ショックのあまり、気持ちが麻痺していたのかもしれません。認めたくないと言う気持ちもあったのかもしれません。ただ、ただ、呆然としていた気がします。
どれだけの時間がたったか、わかりませんが、上の方で声がして、明りが見えてきました。丁度、人の顔が見えるほどの大きさの穴があいて、そこから人の顔が見えました。私は、『レスキュー隊の方ですか?』と、聞きました。
『いえ、○○です』と、その方は、近所の方の名前を言われました。
それから、何人かの顔が見え、『大丈夫か?』と言う質問・・・。
私は、すぐに『しょうくんが、タンスの下敷きになっている』と、告げました。
その中に、私の弟がいたらしいのですが、ほとんど覚えていません。
ただ、みんなが私達を助けるために、中へ入ってこられる時に、『ここは下に、しょうくんがいるから、この上には、乗らないで』と、叫んだのは、鮮明に覚えています。
何人かが、入ってこられて、まずゆうちゃんを、外へ連れ出しました。そして、母が、外へ出ました。私の記憶では、しょうくんの上に乗らないようにしていたつもりですが、
定かではありません。次は、私が、外へ出るように、言われましたが、私は、どうしても、その場を離れたくなかったので、ここで、しょうくんを出すのを見届けたいといいました。でも、『作業をするのに狭くなるし、ここでは、余計危険になって(しょうくんの上に物が落ちてきて)助け出しにくくなるかも知れない』と、言われ。本当に後ろ髪を引かれる思いで外に出ました。 |